「・・・権田原の娘よ」
「は・・・はいっ?」
不意打ちで長から話しかけられて、お岩さんがビクッと反応した。
「お前の里から来た、産婆の所在だが・・・」
「は、はい!? 教えてくださいますの!?」
お岩さんは目を輝かせ、期待に身を乗り出す。
「その女は、もういない」
「・・・・・・はい?」
「その女は、この島の女ではなくなったのだ」
お岩さんがキョトンとした。
この島の女じゃなくなった? どういう意味だろ?
「・・・あ、まさか! も、もう亡くなっちゃってるとか!?」
「そんな!」
ショックを受けるあたし達。
ところが、そんなあたし達への長の返事は、さらに意外なものだった。
「あの女はこの島を出た」
「え? この島を出た? でも彼女は・・・」
「信子はこちら側から、そちら側へ戻った」
・・・・・・・・・・・・。
信子?
その名を聞いて、不可解な予感が瞬く間にあたしの胸を覆った。
信子? 信子って・・・・・・。
・・・・・・まさか。
「そう。力無き女だった、産婆の信子はもういない。あれはクモの糸を操る、長老へと変貌したのだ」