「あたしはね、自分で『ここに居る』ことを決めたんだ」
クスッと主さんは笑った。
「あたしが決めたことを、あんたに許していただく義理は無いさね」
「・・・許さぬぞ」
「おやまあ、頭の悪い女だね。ボケが始まってんのかい?」
「お前は異形。穢れたモノ。ここにいてはならぬ。それは許されぬのだ」
「ならぬ? 許されぬ? 異形? 穢れたモノ?」
主さんが首を傾げ、やれやれと首を振りつつ息を吐く。
そしてまた、心底愉快そうに笑い声をあげる。
「何をどれほど言われようが、あたしの答えは決まってるのさ。それはね・・・」
赤いルビー色の目が、ひときわ強く光った。
「そんなもん、『クソッ喰らえ』 ・・・だよ」
「・・・・・・・・・・・・」
主さんの笑い声が、黄昏色の空間に高らかに響き渡る。
その声は堂々として、どこまでも誇り高かった。
侮辱も、何もかも、全てを弾き返す強さを秘めた笑い声。
確固としたその声を、長は黙って聞いていた。
そして、暗がりの中でも決して輝きを失わない白い姿を、食い入るように見つめている。
今までよりも、ほんの少しだけ大きく開かれた両目で・・・。