でも浄火がその独特の空気を一気にぶち壊す。
ズカズカと無遠慮に近づき、長の前にドサッとあぐらをかいて座り込んだ。
そして軽く片手を上げて明るくご挨拶。
「いよー、長のばーちゃん! 無事に生きてたか!?」
お、長のばーちゃ・・・・・・?
あ、あんたってヤツは、もうっ。
フレンドリーの領域を突き抜けて、ただの無教養な礼儀知らずだよ。
「そこの娘たちは、誰であるか?」
慣れているのか浄火の不作法は気にもとめず、長が質問した。
「こっちはオレの嫁の里緒。こっちは権田原だ」
「天内里緒です。嫁じゃないですけど」
「権田原ジュエルと申します。お初に御目文字いたしますわ」
浄火の紹介に、あたしはとりあえず頭を下げて挨拶する。
お岩さんも丈の短くなったドレスをつまんで丁寧にご挨拶。
長は無言のまま、目蓋の厚い細い目をあたし達へ向ける。
そうしてしばらくそのまま、あたし達の姿をじーっと見つめ続けた。
―― シーーーン・・・・・・
静寂が流れ、この場を支配する。
不安にさせる黄昏色の空気も相まって、あたしはすごく落ち着かなかった。