「ぶうぅぅ! ああ、ホッとしたあ!」


「ちょいとあんた! 今あたしの上を跨いで行ったね!?」


「あ、そうだった? ごめんなさい、つい」


「無礼な子だねぇまったく!」


「これは神秘的な洞窟ですわねえ! なかなか芸術的で、よろしいですわ!」


お岩さんが上げる感嘆の声に、あたしも改めてこの場所を見回す。


どうやら自然にできた洞窟みたいだ。


薄暗い空間の、いたる所にロウソクが灯っている。


ぽうっと揺れる無数の火が、岩盤の自然な造形を優しく照らしていた。


壁の凹凸が綺麗な影を生んで、絶妙に芸術的な景観を作り出している。


ふえー・・・ビックリ! こりゃ本当に神秘的だ!


祭殿って言ってたもんね? 確かに宗教っぽい神格性を感じる場所だね。


「長のいる場所はもう少し奥だ」


奥へ進んで行くと、当然ますます暗くなっていく。


岩肌の色と、光線の量と、ロウソクの明かりが混じり合い、なんとも美しい色合い。


オレンジ色? ううん、そんな単純な色じゃとても言い表わせない。


黄昏を色濃く煮詰めたような・・・


魅せられるような、不安を掻き立てられるような・・・


そんな不可思議な色に身をさらしながら、あたし達は言葉も無く進んだ。