「ごめんなさい。邪魔でしたね」

思わず苦笑してその場から離れようとした。

「まって。……その桜、気に入ったの?」

呼び止められたので振り向くと彼がとっさに張り付けたような笑みを浮かべて問いかけてきた。

「えぇ。……なんだか目が離せなくって」

そう答えると、彼は仮面が剥がれたように優しい微笑みを浮かべた。

「そっか。俺もこの桜好きなんだよね」

「そうなんですか!確かに不思議な感じの魅力があるので私も気に入って眺めていたんですよ」

「そうだろうな。なんせ十数分あの状態だったからな」

なんて感じで数十分、話が弾ませていた。