ヨミタケ郵便局の入り口が、鈍い音を立てながらゆっくりと開く。
「さあ、こちらですよ」
慌てて出て行ったヨミが帰ってきたのは、おそらく日をまたいでからだ。
俺はうたた寝をしていて、物音に気づいて顔をあげた。
戸口に、ヨミともう一人別の人物が立っている。
俺は自分が見たものが信じられず、瞬きを繰り返した。
「……妃香里?」
「わあ、本当に武俊くんだ」
驚いたように目を丸くして、ショートボブの髪を揺らしてみせたのは、俺の元カノである柳 妃香里(やなぎ ひかり)だった。
お気に入りだと昔言っていたパステルピンクのニットに、ジーンズ素材のロングスカートを着ている。
「え? 死んだの?」
「そうみたい。びっくりしちゃった。えへへ」
いやいや、そんなに呑気に笑うところじゃねぇから。
思わずツッコミを入れそうになって、いや、でも別れた女だったわと口ごもりまじまじと彼女を見つめる。
……あんまり変わんねぇな。
別れて数ヶ月しか経ってないもんな。
去年のクリスマス前に告られたものの、付き合うとは名ばかりで何もせずにいたら、呆れられ振られた。
交際期間、実に一ヶ月半。
まあ自分のせいなんだが、超短かった。
大学が違う妃香里とはそれ以来会うことはなかったんだが。