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「……なんか、すごい話だね」


心中話に夢中になっていた俺は、手元の茶が冷めていることに気づき、慌てて一気に飲み干した。

ばーさんは自分の手元を見つめたままじっとしている。
まるで現実の音が聞こえていないみたいで、俺は逆に怖くなる。


「ばーさん、あの」


問いかけにも反応しない彼女に俺が口ごもると、ヨミは俺の肩をポンと叩いた。


「タケさん、お茶を入れ直して貰えますか? 熱めの煎茶がいいですね」

「お。おう」


俺が茶を入れている間、ヨミはばーさんに話しかけるでもなく、引き出しから手紙用の便箋を取り出したり、書類を引き出したりしていた。

そして俺がお茶を持って行くと、盆から手にとって普段俺には見せないような柔和な笑みを浮かべて、ばーさんに差し出した。


「どうぞ」


ばーさんはその湯気を見て、ようやく正気に戻ったように微笑んだ。


「あら、ありがとう」


ゆったりとした動作で湯のみを手に取り、そこからぬくもりを取り戻そうとするように手で囲む。
何度か息で冷ましたあと、喉を鳴らして飲み込んだ。

ようやく焦点が定まったみたいに、俺を見てニコニコと笑う。


「……恥ずかしいことまで話してしまったわね」

「あの」