俺はその場に座り込んだ。
感覚は曖昧なくせに、肉体の疲労感みたいなものは感じるんだから嫌になる。
やっぱり無謀だったのかな。
ヨミの言うとおり、地蔵とやらが来るのを大人しく待っていれば良かったのか。
だけどもう待つのは嫌だ。
あのまま何もせずにいるのは、俺の精神がもたねぇよ。
地味に後悔しはじめたその時だ。
「……全く、手間かけさせないでくださいよ」
「ヨミ」
黒ずくめの男が、木々の合間から呼吸を荒くして現れた。
走ってきたのだろうか、いつも涼しい顔をしている男が汗だくだ。
探してくれたのか、と思うと胸が熱くなる。
「ヨミ。俺、戻りたいんだ。現世に。なあ、地蔵はどこにいるんだよ。どうやったら俺は戻れるんだ」
必死に言うと、ヨミは帽子をとって俺に頭を下げた。
「貴方に謝らなきゃならないことがあります」
「なんだよ」
「嘘をついていたことです。地蔵はずっといたんですよ。あなたの傍に」
「どこにだ」
「ここにです」
俺は辺りを見回した。
いや? ここにいるのは俺とヨミだけだが。
ヨミは呆ける俺に苦笑いを返す。
「僕ですよ。……僕が地蔵菩薩です」
「……はぁっ?」
ヨミの告白に、俺は間の抜けた声しか出せなかった。