「幸村さん!!会議室取って。来週の月曜日の15時から2時間」

「はい。お客様ですか?」

「そう、3人…」


「幸村君、見積書作って。下書きコレね」

「あ、はい!いつまで…」

「すぐ!これから持っていきたいから!」


「幸村さん!…」

「幸ちゃーん!」



『あ゛ーーーー!!!みんな勝手に言って~…何で<待つ>ってことを知らないの!?』

心で怒鳴り、ひたすら仕事をこなす。

4年前の新入社員時期が懐かしい…

入りたくて入った、大手の電機メーカーの会社。

思えば、大学1年のころ 今後の就職を見据えて周りの友達のように遊びまわることは控えてきた。

授業も真面目に受け、試験だって上位だった。

学校の授業だけじゃなくて、資格試験だって果敢に挑戦して取れるものは取ってきた。


全ては、就職の為。

幸村(ゆきむら)あおいには夢があった、

某大手電機メーカー会社に就職すること。

大学に入ってすぐ、4年生の為に張り出されてあった求職リストの中 人気№1と言われたこの会社。

特にやりたいことや夢などなかったあおいが 初めて目標としたものだった。


なぜ、ここの会社か…

答えはとてもシンプル

一流企業のネームバリュー。

給料とボーナスは働いている限り、もらい損ねることはない!!

おまけに、将来有望な未来の旦那様がいる!(かもしれない)


だから、入社が決まったとき 自分は勝ち組だと確信した。

まわりで、就職が決まらない友達を慰めるたびに優越感に浸った。


「あおい、頑張ってたもんね。あたし、どうしよう!!」

「あおい!これから取れる有利な資格って何?!」

投げかけられる質問全てが 私を羨ましがる言葉のように聞こえたものだ。



それまでは…

<大学生をもっと楽しみなよ>

<さびしくない?>

<合コン誘おうか?つまんないでしょ、毎日>

こんな言葉を数えられないくらい投げかけられた4年間。

家から学校。家からバイト先、学校からバイト先そして家がいつものルート。

自分はそれでもいいと思ってきたのに、こんな言葉を聞くたび 心が折れた。

だから、この会社の内定は 全ての努力が報われた瞬間だった。

なのに、4年目のこの状態…

なんのために働いているんだろう…

何がしたいんだろう…

私は、どうしたいのか…