「最近、満月の夜になると必ず人食い鬼が出るらしいんよ…。外に出なければ被害はないみたいんやけど…」


女は真っ青になった。
それもそうだろう。

真夜中、満月が妖しく光輝く時に人が喰われる。

女たちにしてみればそんな怖いことは早くなくなって欲しい筈だ。


「大丈夫だよ。何としても守ってあげる。だから絶対に夜外に出ちゃ駄目だよ?」


悠は女はの頬に手を添え笑った。
その悠の安心させるような笑みを見た女は気絶しそうになった。



女誑しっていうのはこういうことなんだよ、悠。
土方さんより酷いって。
まぁ、僕もよくやったりするけど…



「新撰組のお人は皆、端正な顔しとりますなぁ…」


藤堂の隣で酌をしていた女がふと呟いた。


「それって僕も入ってる?」


「へぇ、そうおす。でも、藤堂はんは可愛らしいんやけどなぁ…」


複雑な心境だった。
男に可愛いというのは誉め言葉なのか自分でもよくわからなくなっていた。


「そっか。ありがとう。」


藤堂は笑った。
女は頬を赤く染め、畳へと視線をそっと動かした。


「平助、帰るよー。私、夜やることあるんだよねー…」


「悠が?珍しい…」


悠は女たちに囲まれながらも立ち上がった。
藤堂も仕方なく立ち上がった。

藤堂にしてみればまだまだ飲み足りないだろう。
だが、仕事があるとなれば別だ。



「じゃあ、またねー!お蘭さん元気でね!」


「へぇ、また来ておくれやす…」


見送られながらも島原をあとにした。