「なぁ!どうなんだよ!ボーッとして…」
悠はハッとした。
すっかり打ち合いは終わってしまっていた。
二人は息を切らして悠の方を見ている。
「ん…?ごめんごめん。これなら大丈夫。覚悟を持ってね。あー、隼人!私とやろ。なーんか色々考えてたら疲れちゃった。」
宮川は悠に木刀を渡した。
何と言っても悠とやるのは腕試し以来だった。
「負けねぇよ。」
和田は中段に構えた。
悠は上段に構えた。
宮川が合図を出したと同時に和田は床を蹴った。
悠は和田の次々と繰り出される攻撃をいとも簡単に流していた。
「いやぁ…。本当、強くなった。まだ私と会ってちょっとしか経ってないのに。」
和田は楽しいと思うと同時に悔しかった。
全力でやっているのに悠は涼しい顔をして流していく。
こんなにも差があるのかと。
「でも、まだまだ。」
悠は後ろに下がったと思いきや、床を思いっきり蹴り、和田の懐に潜り込んだ。
「っ…!?」
そのまま突きを繰り出した。
和田は後ろに倒れ激しく咳き込んだ。
「ゲホッ、ゲホッ…!!こんなに…差があるのかよ…!」
「あはは!そりゃあ、組長って命じられたしねぇ…。」
悠は木刀を仕舞った。
考えていたこともすっかり吹き飛んだ。
「二人とも、ありがと。」
悠は笑って道場から出た。