「余計なことは言わなくていいんです。……もう、関係ありませんから。」
悠は屯所で待っていた斎藤に喜右衛門を引き渡した。
「悠さん、今のって…」
「関係ないよ。沖田さん、私は間者でも何でもない。……それだけは分かって欲しい。」
「疑いませんよ。もし、貴女が間者なら私がバッサリ斬ってあげます。」
沖田は笑顔で答えた。
ただ悠の顔色はあまり良くはなかった。
何か疚しいことを隠している訳ではない。
もう縁は切った。
「悠!見てくれよ!」
防具をつけたまま廊下にいたのは和田だった。
悠が帰ってくるのを待っていたのだ。
悠はいつも通り笑顔を浮かべ和田のあとをついていった。
「悠、僕のも見てよ。」
宮川もいた。
自分には頼ってくれる人がいる。
それだけで良かった。
「うん。二人で打ち合いをしてよ。」
悠は道場の隅に正座をして二人を見た。
最初に見たときとは違い、気迫も何もかも違う。
すっかり変わった。
「変わったなぁ…」
こんな呟きは二人のぶつかり合う木刀の音に消された。