「隼人!そっちに一人逃げた!」
というのは口実だった。
悠はわざとに逃がしたのだ。
殺せなくても何が出来るか見たかった。
「っ……!」
和田は覚悟を決め、刀を抜いた。
必死に自分に言い聞かせていた。
こいつは敵。
殺らなきゃ殺られる。
和田は相手の攻撃を防いだ。
自分が思っているよりも冷静なのだ。
そして、稽古のお陰か体が考えるよりも先に動くのだ。
「っ……」
人を斬るのは初めてではない。
けれど、いざ戦うとなると縮こまってしまう。
「くっ…!」
和田は男の腕を斬りつけた。
それを見た悠は周りにいた男たちを斬り、突っ込んだ。
「怪我はない?」
悠は男の首をハネた。
首から勢いよく吹き出す血は和田にかかった。
和田は返事をすることさえ出来なかった。
「もし、人を殺すのが嫌なら殺さない方法を見つけたらいい。でも、それは殺すということ以上に覚悟がいる。」
悠は血振りをして刀を納めた。