電車が雪で遅れている為、まだ時間があった。
 さっき買った缶珈琲を駅のホームの隅で開け飲み始める。
 温かいのが喉を通り体に染み渡るのがよく分かった。

「っはぁ...。」

 一気に飲み干す。
 無くなっていた熱が戻ってくるようだった。

 でも暫くすれば...

「うぅ...さ、寒い...」

 と、こうなる訳で。
 寒さが指先から徐々に体を蝕んで来た。
 寒さの余りにホームの隅で踞る誠也。
 あれ、これ、ホームレスっぽくなっちゃってね?
 とか一瞬考えたりしたが、そんな考えも寒さで思考が止まった。

 あと、15分位で電車は来るはず。
 えらく長く感じる。
 寒い、寒い、寒い。

 家に帰ったらヒーター付けて、温かい物が食べたい。
 あれ、でも、冷蔵庫に何かあったっけ。
 そう言えば最近コンビニとかスーパーのお惣菜ばっかりだったな。
 家に帰っても誰もいないし。

 俺って寂しいな。

「あの、ちり紙いりませんか?」
「へっ?」

 不意に掛かってきた言葉。
 何だか優しい声だな。そう思いながら声が聞こえた上を向くと

「ちり紙、いりませんか?」

 優しい声、優しい笑顔を向けてくれている女の子がいた。

「あ、ありがとう。」

 誠也は急に恥ずかしくなって、立ち上がりちり紙を貰った。

 アルバイトかな。

 サンタの格好をしてちり紙を配る女の子。
 髪はセミロング程で綺麗な黒髪。
 立ち上がった誠也と身長を比べると160㎝程だろうか。
 細身で華奢な体付き。

「はいどうぞ。早く電車来ると良いですね。」

 ふわっと笑って見せる女の子に、誠也はドキッとした。
 心拍は上がり、さっきまで冷たかった体が火照る。

「あ、あの!」

 背を向けて別な所に行こうとする女の子に、誠也は声をかける。

「あ、えっと...。」
「?」

 呼び止めたは良いけど何を言ったら…。
 思考回路は止まり、へんな間が開く。


  なんだこれ。おかしいな。


 彼女の顔を見るだけで胸は跳ね上がり、ドキドキと心臓の鼓動が聞こえる。


  こんなのって…。


 耳まで赤くなる。手に汗を握る。
 女の子がふわりと誠也に笑い掛ける。
 カッと熱を帯びる頬。


  まるで恋じゃないか。