そこで言葉を切って、王子は白雪姫のほうに視線を向ける。
『隣国の姫と婚約を結べば、僕の権力はますます強まる。
そうすれば、反発するものがあろうとねじ伏せられる。計画は、うまく進んでいた。失敗したのは、僕が大臣とその話をしているところを、君の父に知られてしまったこと』
『じゃあ、……もしかして、』
『そう。君の父、国王は、僕が本当の王子でないことを知ってしまった。そして、それを君に言おうとした。……だから、殺したんだ。
まあ、その結果それを君に見られてしまったんだけれどね』
本当に最後の最後まで爪が甘いよ、と笑う王子。
『僕は、権力を入れるたび安心していた。でも、その傍らで自分のした行いをふと思い出して、後悔し続けていた。途中で終わらせることは、できない。僕の手はぬぐってもぬぐいきれないほど、血で染まっていたから。
だから、ギル、お前に、殺してほしかった』
『……』
『急所を外したのも、白雪姫の傍らに置いて護衛をさせるようほのめかしたのも、護衛を手薄にしておいたのも、全部、本当は……終わらせたかったから。
でも君がもし、来なければ僕は本当に彼女と婚姻を結んで、権力を手に入れるつもりだった。つまりさ、僕は卑怯者で、下劣で、最低な人間なんだ』
皮肉めいた笑みを浮かべ、そっと剣士を見上げる王子。
しかし、剣士は唇を噛みしめぐっと何かを堪えるように剣を強く握りしめる。
『……俺を、助けたこと……後悔、していますか』