数秒の、静寂。

その沈黙を破ったのは、


『……やっぱり、君は強いなぁ』


王子だった。

ぼろぼろの体を支えきれないのか、壁にぐったりともたれかかりながら王子は、なおも剣を向ける剣士にほほ笑んだ。

それは、今まで見てきたあの張り付けた気味の悪い笑みではなく、ただただ肩の力を抜いて自然に振る舞う笑みだった。


それまで険しい顔を緩めなかった剣士が、口を開く。


『やはり、あなたはこうなることを望んで、いたんですね。こうして俺がこの城に侵入できたことすら、あなたの計画通りだった』

『……どうして、そう思う?』


『あなたのその目は、生きる意味を持っていないから』


『……そうか』


自嘲するかのような笑い声。

そして、王子はゆっくりと口を開いた。


『僕は、もしかしたら終わらせたかったのかもしれない。このしがらみから』

『……しがらみ……』

『どうせ、この状況は打破できない。だから、教えてあげるよ、僕がこうなったわけも、全部』