絶句する白雪姫を片目に、剣士が鞘から剣を抜き取りたった一人、立ち向かう王子にその矛先を向ける。


『用心深いあなたなら、裏を取られないよう、自分の近衛兵を使って厳重に婚約をしないと踏んだ読みが当たりました』


『はは、長年僕の片腕をしていただけのことはあるなぁ。まったく、僕の好意を無駄にするなのかな?』


『やはり、そうでしたか』


剣士が目を細める。

二人のやり取りが読み取れず、白雪姫は眉を寄せて剣士に尋ねる。


『どういうこと?』

『王子は、わざと急所を外したのです。俺は白雪様がさらわれた後、小人たちに助けられ、一命を取り留めました』

『……そんな、』


バカな話があるわけない、そう言い切ろうとした白雪姫の言葉は続かない。なにより、そう言い切った本人の表情に一切嘘を口にしたようには、見られなかったからだ。


『ああ、せっかく助けてやったのに、恩返してくれないとは酷いなぁ』

『それも仕組んだことなのでは?』


両者がその言葉を最後に、くすりと笑いあい、剣を構える。

そして数秒の間。


『───っ!!』


剣士が床を蹴り上げ、真正面から王子との距離を一気に詰める。