こんな惨めな私を、嫌いになってくれればいいのに。


そうしたら、私はきっともうこれ以上恭ちゃんを、傷つけなくて済むのに。



私が、そう吐き出すと恭ちゃんは背中に回した腕の力を強めて痛いくらいに抱きしめた。普段なら絶対にしないその行動に、恭ちゃんの余裕もないのだと気づく。


「ごめん、ごめんなハル」


「……」


「俺、ずっと気づかずにいた。俺はお前がずっと俺を恨んでるって思ってた。俺をかばったせいでバスケが出来なくなって───それなのに、俺はお前にまたバスケしようだなんて最低な台詞を吐いて。

 だから、恨まれても仕方ないって思った。それでも、お前の隣に居続けられるならお前を守り続けるのが、唯一出来る罪滅ぼしだって」


「……そんなのっ、」


言葉が、続かなかった。

嗚咽が邪魔をしてうまくしゃべれない。でも、恭ちゃんには伝わっていた。


「そんなの、お前は望んでなかった。ごめん、気づくのが遅くて、遅すぎてごめんな。だから、バスケを辞めた日、お前は俺を怒ったよな。なんで辞めたんだって。しばらく口もきいてもらえなかった。

 お前は俺のことを瀬尾って呼ぶようになってハルって言うのはやめてだなんて言って、距離を取ろうとしてた。俺がお前を看病するって言って、勉強をほっぽったら病室から叩き出された。俺が頼ってほしいって言うたび、お前はずっと悲しそうな顔してた。

 ごめん、気づかなくて、ごめん。


 ───お前はずっと、俺のこと守ってくれてたんだ……っ」