もう、左肩は治らないでしょう。

そう、先生に告げられた時確かに恭ちゃんを少しも恨まなかったと言ったらうそになる。でも、それでもきっと私は何度だって恭ちゃんを助けたんだ。

あの日が何度繰り返される羽目になっても、きっと私は同じことをした。


バスケもできなくなった。好きだった、もっとやりたかった誰よりもシュートを決めて、誰よりも早く走り回って。


でも、それでも恭ちゃんを助けたことに後悔なんてなかった。


だから、私は───本当は、守ってもらわなくてもよかったんだ。恭ちゃんを助けたことに、恭ちゃんは何の負い目も感じる必要はなかったんだ。



けれど、恭ちゃんはバスケを辞めた。

あんなに大好きだったバスケを、いとも簡単にあっさりと、辞めてしまった。私に悲しい顔一つ見せずに、もう飽きてきたからなんて嘘をついて。


ただ、私がこれ以上傷つかないように。私のために、辞めた。



その時に、私は気づいてしまったんだ。


恭ちゃんは、私を守るためなら自分を犠牲にしてしまうんだって。




「っっ、恭ちゃんは、きっと何もかも犠牲にして私を守ろうとする!!

 もう私は恭ちゃんから何も奪いたくないっ、これ以上恭ちゃんを頼ったら、恭ちゃんきっと壊れちゃうっ」


「……」


「言いたいよ、好きだって恭ちゃんが好きだって言いたいよっ!!でも、言ったら恭ちゃんはやりたいことも、したいことも、将来の夢も、自分の気持ちも、自分の人生全部犠牲にして私を守ろうとする。だから、言えない、言えるわけないっ」


「……」


「これ以上っ、私は恭ちゃんを傷つけたくない……!!」