肩が、震えていた。


俺よりも身長の高い瀬尾が、どうしようもなく小さく見えた。弱く、脆い子どものように見えた。


「……夏祭りの日にさ、」


「……」


「言われ、たんだ。ハルに。瀬尾は、変わらないよねって」


夏祭り、の日。

それは、つまり俺と朝比奈さん、結城と瀬尾ではぐれてしまった時のことに違いない。


結城が、変わらないよねと言った。ずっと、私の隣で変わらず世話焼きで軽口ばかり叩くそれでいて、安心する───ずっと、ずっと幼なじみでいてくれるよねきっと、そういう意味で。


瀬尾が、くしゃっと、顔を歪める。


「嫌だって、思った。このままじゃいやだって。きっと、このままだったらハルは離れていく。誰かに奪われていくのを、見ているだけになる。それが、たまらなく嫌だった。


 ───気づいたんだよ、その時に。


 俺は、どうしようもなく、アイツのことが好きなんだって」


「……」


「無理なんだよ、忘れようとしても、気持ちを押さえようとしてもハルが離れないんだよ!何で、何で、何で!

 こんなのって、こんなのって、ねえよ」


掠れた喉から絞り出すような声が、胸に突き刺さる。


やっぱり、瀬尾は好きだったんだ。

結城が、好きだった。


ずっと、ずっと、きっと俺が想像もできないくらい長い間───好きだった。