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自分が、よく分からなかった。

どうして、瀬尾に劣等感を抱くのかも、羨ましく思うのかも。ただ分かるのは、こんな感情を抱くのはたぶん結城だけってこと。


そんな感情をずるずる引きずったまま、その日の劇の練習が終わって。結城と顔を合わせるのが怖くて、真っ先に教室を飛び出した。


下駄箱に向かう最中、最悪のタイミングで俺は出くわしてしまった。



ちょうど、あと数メートル先の昇降口手前の職員室。そこのドアが、タイミングよくがらりと開いた。そして、中から出てきたのは───



「……あ、」



瀬尾、だった。

どうしてだか、制服を着て瀬尾が職員室から出てきた。



瀬尾は、俺に気づくとしまったとでもいうようにすっと視線を逸らして、それでも視線を揺るがせなかった俺に対して、小さく笑った。

それは、とても疲れ切った乾いた笑みだった。


「あちゃー、ほんとは出くわさないように来てたんだけどなぁ」

「なんで、来てるなら」


教室に、来ないのと喉の奥まで出かかって俺は止まる。……そんなの分かりきってた。きっとこの3日間、瀬尾が学校に来れなかった理由もそれ以外当てはまらないのだから。

押し黙って、俯く。

瀬尾のほうが何倍もつらいはずなのに、馬鹿みたいに明るい声で、



「悪かったな、学校顔出せなくて。3日もずる休みしてたらさ、先生から顔出せって怒られてさー」


「……」


「ホント困ったもんだよ。こっぴどく怒られた」


たはは、と瀬尾が頭を掻きながら笑う。笑って、笑って、笑って、それからゆっくり手を下ろした。笑い声が止まった。