結城は、あまりにも冷たいナイフのようにそう吐き捨てると、何の未練もなく後ろを振り返ることもなく、被服室から出ていった。


教室に、すすり泣く声が響き渡る。

それは同調していくように、広がって───さっきまで頭を下げていた4人の女子たちが次々に床にへたり込んでいく。



目の前に起こったことが、本当に事実なのかわからなくなってしまう。


あの友達思いの、馬鹿みたいに優しい結城が───そんなことを言うだなんて、きっと誰も予想していなかった。



だから、その時確信した。



…………きっと、瀬尾に勝てないって。



「……こはる、ちゃん」


じっと窓ガラスを覗いていた朝比奈さんが、被服室を出て泣き声が聞こえているはずなのに一度も振り返らない結城の背中を見つめていた。


結城にとって、きっと瀬尾は───他の何に変えても、守りたいものなんだ。


だから、瀬尾と友達、どっちを選ぶかと目の前で選択肢を突き付けられたとき、何の迷いもなく、友達を切り捨てた。


それが、きっと。


ぎゅっと、両手に抱えた布を握りしめる。


それが、きっと。