でも、俺はあの時結城のあの変わりようを見て、気づいてしまった。
「何が、ごめん?」
結城は、ようやく重い口を開いた。
怒りも、苦しさも、悲しさもすべて取り払ったような抑揚のない、平坦な声だった。
びくりと、肩を震わせて仙田さんが、震える声で言った。
「あの時、私っ結城たちを茶化すようなことして───それでっ、瀬尾くんずっと学校来なくて。……結城は口には出さなかったけど、きっと怒ってるよね。ごめん、本当に、本当に、ごめん」
周りの女子たちも、仙田さんにつられるようにごめん、と謝ってもう一度深く頭を下げる。
結城は、しばらくじっとその下げた頭を見下ろしてそれから、ふっと自嘲したように笑った。
それがあまりにも、この状況には不釣り合いで。そして、結城は言った。
「もう、いいよ」
その一言に、誰もが肩を撫でおろしたに違いない。けれど、その言葉には続きがあった。
「───もう二度と、仙田さんたちとは関わるつもりないから」