すぐ、入口近くに結城が立っていた。

どうやら、今さっき来たらしいことがすぐに分かった。でも、それよりも真っ先に視線が行ったのは───結城のすぐ前、4人の女子たちが結城に向かって頭を下げている光景だった。


周りで衣装を縫っていた女子たちも、その異様な光景をただただ目を見開いて、見ているばかりだ。


すると、その重い沈黙を破るように、真ん中にいた女子───そうだ、仙田さん。数日前に台本を組んでいるときに俺に詰め寄ってきた奴が、頭を下げたままもう一度振り絞るように言った。



「───ごめん、ごめん、結城っ」





どうして、謝るのか、すぐに理解できた。

クラスの誰もが、気づいていた。瀬尾が3日間もの間、学校に来ないのはあの一件のせいだということを。


そして、そのせいで、結城と瀬尾の仲がおそらく険悪になったんだろうということを。


あの結城の変わりようが、今でも忘れられない。



いつも誰かのためなら必死で、自分がいくら傷ついたって真っ先に前に立って守ってくれて。


そんな友達思いで、馬鹿みたいに優しい結城が───あんな風に、切迫した声で。心の奥からすべてをまき散らすみたいに、真っ黒な声で瀬尾の名前を叫んだことが。


結城は、何も言わなかった。

ただただ、頭を下げる女子たちを見下ろしたままだった。