ぽつっと、呟いた。


「何が?」

「前は喋れるだけで精一杯だったのに、もっと仲良くなりたいって、」


そこまで言って、止まる。

今、ものすごくぽろりとすごいこと口にしなかった、俺。


頭に酸素が回らなくなってしまったみたいに、真っ白になる。言い訳もできないくらいに、真っ白に。


思わず、ぎこちなくと朝比奈さんのほうを見ると───そっかあと、見ているこっちが脱力したくなるほどの柔らかな笑みを浮かべているだけだった。


……よかった、ばれてない。


「私もね、最近すごく欲張りになったなぁって思うんだ」



朝比奈さんが、そう言いながら困ったもんだよね、と目を細めながら呆れたように笑う。


……朝比奈さんでも、何かに欲を出すことがあるんだ。

なんだか新鮮で、それでいてそれがなんなのか気になる。


「お金とか、夢とか、そういうの?」

「ううん違うよ」


俺がそう聞くと、朝比奈さんはぼうっと遠くのほうを見ながら心ここに在らず、といった感じで返事をする。

視線の先はどこか遠く、廊下の先を向いているようだった。その視線がだんだんと移動して、被服室のほうへ。


でも、俺はそんな事よりも朝比奈さんの欲張りになる理由が聞きたくて、


「じゃあ、」



他に何かないかなと、声を出したその時。