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瀬尾が学校へ来ない日が、3日続いた。


文化祭の準備はいよいよ佳境に入り、たった一人残された結城はいつもと変わらない表情でクラスのみんなに指示を飛ばしていた。

むしろ、結城は瀬尾の話題を出されること自体を避けてさえいるようだった。俺が瀬尾の名前を出すとすぐに話題を切り替えた。無理に笑おうとする結城が見ていて、心が締め付けられそうだった。


そんなこう着状態が続いたまま、午前中の授業が終わり文化祭の準備へとみんなが切り替わる。


台本の読み合わせが終わった俺は、一人自販機に飲み物を買いに、歩いていた。


時間帯がよかったのか、自販機の置いてある渡り廊下には人の気配はない。自販機の前にたって、お金を入れる。ミネラルウォーターのボタンを押すとがこんと落ちてくる音が聞こえた。


それを取ろうとしゃがみこんだとき、


「……あ」



すぐ近くに、足が見えた。それをたどっていくと───布。なぜか大量の布が山積みだった。

よくよく見てみると、誰かが前も見えないくらいに積まれた布を抱えているのが見えた。



もしかして、と思いながらミネラルウォーターを手に取って、立ち上がると、


「……っっ」

「だ、大丈夫朝比奈さん」


顔を真っ赤にした朝比奈さんが、大丈夫も言えないくらい切羽詰まっているのか、こくこくと何度も頷く。いや、大丈夫じゃないからそれは。