何かを堪えるような声に、私の心がぐらつきそうになる。


だめだ。

知られては、いけない。



私の気持ちを、恭ちゃんだけには知られてはいけない。



私が、恭ちゃんの隣にいられる方法はたった一つ。


それは、知られないこと。私の気持ちを、知られないこと。そして、恭ちゃんの気持ちから知らないふりを続けること。それが、それだけが唯一。



───何もかもを奪ってしまった私が、これ以上恭ちゃんから奪わない方法。



立ちくらみがした。気を強く持たなければ、今にも倒れそうだった。苦しい。息が、できない。喉の奥から塊のようなものがこみ上げてきて、油断したら何もかも吐き出して、泣いてしまいそうだった。



ごめんね、ごめんね恭ちゃん。

まだ、好きみたいだ。…………ごめん。



でもね、恭ちゃん。


私は、恭ちゃんのためだったら───


「はは」


「……結城?」


「ねえ、瀬尾。そのおめでたい自己犠牲でさ。


 ───罪悪感は、消えた?」





偽善者だと言われても、構わない。