ようやくすべての用紙が集まって、私は立ち上がる。佐藤くんも同じように立ち上がった。


きっと、佐藤くんはこれからする私の行動が読めていたのかもしれない。


一歩踏み出して、振り返ると同じように足を進めた佐藤くんがいた。


「佐藤くんも練習ちゃんとしてください！」

「……」


そういって笑うと、佐藤くんはそんな私をただじっと見つめたまま何も言わない。


私の気持ちを見透かされているようで、怖くなる。でも、私は誤魔化してしまった。だって、それ以外に私と瀬尾が今のまま、ずっといられる方法はこれしかないんだから。


「じゃあ、私は邪魔にならないように仕事して決まっす」


おふざけのように敬礼をして、呼び止めようと伸ばした佐藤くんの手をするりと交わす。そして、逃げるように教室を後にした。


あたりから聞こえてくる、幸せそうな笑い声や楽しそうな笑顔から逃げるように私は階段を下りて、降りて、降りて、走って、走って、逃げる。そして、走り続けた足がようやく止まる。


だって、廊下のすぐ突き当りに、


「…………結城」



瀬尾が、立っていたから。