「───そうだよ。俺は、結城が好き」
はっきりと、聞こえた。
全ての雑音を取り払って、その言葉だけがやけにくっきりと、聞こえた。
吐息が、震えた。涙で視界がぼやける。固く握ったてのひらからだんだん、体温が失われていく。それは伝染するように、私から熱を奪っていく。
「ずっと好きだった。たとえ気づいてくれなくても、遠ざけられたってずっとずっと好きだった」
ほろほろ、と。
心が崩れていく。
「結城も佐藤も朝比奈も関係ないよ。あいつらはただの友達。違うのは俺だけ。俺が、結城を好きなだけだよ」
───なんで。
なんで、なんで、なんで。
髪と髪の隙間から、瀬尾がただ何かを取り繕うようにしゃべり続けるのが見えた。だから、分かってしまった。かぶせるように繋ぐ言葉も、寂しげに笑う口元も、全部、全部全部。