そして、私の悪い予感は的中する。
仙田さんが、言ったのだ。
「───でもさ、結城……瀬尾くんとも仲いいよね?どっちが好きなの?」
ぴくり、と一瞬肩が震えた。
視界が真っ黒になっていく。
呼吸が乱れて、慌てて息を飲みこむ。
向けられる好奇心の目線たちから、私は思わず視線を逸らした。
すぐ隣にいる瀬尾を見る事すら怖くて、でも今すぐにでも話題をそらさなきゃ、逸らさなきゃ、と焦る気持ちがますます私から言葉を奪っていく。
耳から、音が遠のいていく。何かに蓋されてしまったように、うまく聞き取れない。
「もしかして、結城二股!?ってそんなわけないかー」
───めて。
「えーでも、瀬尾くんともいつも仲良さそうだし、佐藤くんとも一番話してるの結城じゃん」
───やめて、やめて。
「あはは、どっちなのよゆーうーきー。私的には瀬尾くんかなって思ってるんだけど。教えてよー」
───やめて、やめて、やめて。
「私女の勘なんだけど、瀬尾くん絶対結城のこと好きでしょー?なんかいつも結城に甘いし。ねえ、その辺どうなの瀬尾く、」
───これ以上、私から瀬尾を、奪わないで。
溜まっていく涙が零れ落ちないように、ぎゅっと手のひらを握りしめる。
何も反論できないことが情けなくて、何か一言でも口に出してしまったらすべてを知られるんじゃないかって怖くて。
固く、目を瞑ったそのとき。