「そういえばさ、この前の夏祭り私、朝比奈さんと佐藤くんが一緒に回ってんの見たんだよねぇー。もしかして佐藤くんと朝比奈さん付き合ってるの?」

「えーうっそォ。でもさ、さっき結城が印刷しにいった時、真っ先に渡し忘れた用紙もって行っちゃったよね佐藤くん。それに戻ってくるのも遅かったし。二人とも何してたの?」

「もしかして、三角関係とか!?」


きゃーっと、周りにいた女子4人がウェーブのように黄色い悲鳴を上げる。


佐藤くんは、どうしていいのかわからないのかずんずんと詰め寄ってくる女子たちから逃げるように、後ろに手をついてずるずる下がり始める。


あー……あちゃー。

この手の話は女子って大好きだから、見境なく根掘り葉掘り聞こうとするんだよなぁ。


怖いのか、私の制服のそでをぴっと引っ張って、助けて、と口元を動かす佐藤くん。ああ、もう仕方ないなぁ。


私は、少しだけ佐藤くんをかばうように前に出て、マシンガントークをさく裂させる女子たちを窘める。


「こらこら、佐藤くんぐいぐい来られるの苦手だから止めてあげて」


そういうと、近くにいた一人が不満そうに唇を尖らせる。が、その瞬間ころっと表情を変えて、なぜか意味深に口元をにやりと上げた。


一瞬、嫌な予感が背中を霞めた。



「あーそうやってかばおうとするってことは、もしかして……結城ってば佐藤くんのこと好きなの!?」


「え、」


「あーほらっ、絶対そうでしょー!!最近よく二人でしゃべってるのよく見かけるしぃ」


目にも留まらない速さで、女子たちがますます話を膨らませはじめる。