教室の床にそれを置いて順番に広げていく瀬尾に続いて、私も広げ始める。後ろにいた佐藤くんは何か言いたげな顔で一瞬、私を見た後───結局は何も言わず、隣で作業し始めた。
周りを見渡すと、やけに人数が少ない。
「他の人は?」
「衣装班が被服室、小道具班が木工室、大道具班が外でパネル作ってる」
隣いた瀬尾が、そういいながら一枚一枚上から用紙を取って、重ね合わせてそれを私に渡す。ああ、なるほど。だから今いるのは舞台に出る人たちだけなわけだ。
納得して、私はその用紙を瀬尾から受け取る。
またその上から床に置いた用紙を一枚とって、重ねていく。それを隣でしゃがんでいた佐藤くんに手渡した。
そして、しばらくもくもくと作業している中、その沈黙を破ったのは佐藤くんの隣で作業していた、白雪姫役のもとい、腹黒姫役の仙田さんだった。
ふと、ぽろりと佐藤くんから用紙を受け取ったとき、言ったのだ。
「───そういえば最近さ、結城とか朝比奈さんとかとよく話してるよね」
その言葉に続いて、近くにいた女子たちも賛同するように言葉が続いていく。
「あー確かに。ずっと気になってたんだよねぇ。佐藤くん一年のころは話しかけられても全然反応なかったし。最近になってからだよね、女子と話すようになったの。なんで?」
「……なんで、って」
困ったように佐藤くんが私を見上げる。
そのしぐさが余計、周りにいた女子たちを刺激したのかみんながだんだん身を乗り出して機関銃のように佐藤くんを問いつめ始めた。