「……そう、ですか」


噛みしめる。

思った以上の苦しさも、辛さもなかった。ただ淡々とその事実だけが、私の頭の中でぐるぐる回っていく。


小さく、笑う声が聞こえた。ひどく、自嘲的な乾いた笑い声。


誰だろう、と思って周りを見てみる。佐藤くんを見上げる。そして、それが自分の声だと初めて気づいた。


「知られ、ちゃいましたか」


「……」


「あーあ、私あんまり自分の過去を語って傷をなめ合う、とかフェアじゃないんスけどねぇ」


上手く、笑えているだろうか。

私は上手く、笑えているだろうか。


誰にも心配を掛けないように、誰にも迷惑を掛けないように、誰にも頼らないように誰にも───瀬尾だけには、絶対に寄りかからないように私は必死に見繕った笑顔を、佐藤くんに向ける。


佐藤くんは、そんな私をとても寂しそうに唇を噛みしめて、すっと視線をそらしてしまう。そして、言った。


「だから、だから……分からない」

「……え？」




「───瀬尾のこと好きなのに、それをひた隠しにする結城が、分からない」