「───知ってるよ、もう。
どうして結城が、雨の日に肩が痛くなるのか」
「……え」
足が、止まる。
思わず、先に進んでいく佐藤くんの後ろ姿を見上げた。あまりにも自然に佐藤くんがそういったから、私はしばらく何がなんなのか理解できなかった。
だんだん、両手に抱えた台本の束を持つ手に力が入る。自分でも分かるくらい、手汗が台本に滲んでいるのが分かった。
佐藤くんは一度ぴたりと足を止めると、少しだけ振り返って、言った。
「全部、瀬尾から聞いた」
全部。
それは、私と瀬尾が今まで抱えてきた過去すべてを知った、ということ以外の答えは見つからなかった。
すとん、とその言葉が心に下りてくる。焦点の合わない視線を泳がせながら、他人事のように思う。全部、分かった上で佐藤くんは私に聞いたんだ。瀬尾が好きかどうか。