軍議を終え、赤い絨毯の敷かれた女神国王宮の廊下を歩く。

さて、ああは言ったものの。

私の表情は浮かないものに違いない。

…西方諸国の戦は、以前動向を探りに行った紅から聞かされている。

一度でも刃向かった者は徹底的に蹂躙する。

圧倒的な兵数と容赦のない戦術、戦略で、進軍の後には廃墟すら残さぬ。

西方諸国の戦は情の欠片すら感じさせぬ。

それが実際にその眼で見てきた紅の感想だった。

それ程の戦をする西方諸国の覇者、帝国。

彼らが戦わずして傘下に加わるなどという行為を認めるかどうか。

答えは否だろう。

話から聞く限り、帝国は力で圧倒し、相手を屈服させた上での支配を好むようだ。

始めから白旗を振るような相手には、容赦のない殺戮しか待っていないのではないか。

そんな気がした。

…やはり戦は避けられぬのか。

しかし今回戦になるとすれば、最早これまでの規模の戦いとは違う。

女神国勃興前…あの小国と大国の戦が小競り合いにしか過ぎないと思えるほどの、それこそ、この地を東と西の二つに分けての大戦となるに違いない。

…その大戦で、一体どれだけの命が奪われるというのか。

その事を考えると、陰鬱な気分を抑えられずにはいられなかった。