翌日。

女神国軍議室の円卓に、近隣国の王達が会する。

私が東方同盟に参加している国々に声をかけたのだ。

無論、『帝国』への対応についての軍議の為である。

「あの海の一族の末裔の興した国でさえ滅ぼされたらしいな…」

「うむ。やはり二百万という数は圧倒的か…」

王達が口々に呟く中。

「まだ戦になると決まった訳ではない」

私は言った。

「我ら東方同盟は、確かに西の…帝国からの侵略に対抗する為に結成された。しかし、もし帝国が戦わずしてこの地を統一したいとだけ考えているのならば…私は帝国の傘下に加わってもいいと考えている」

私の言葉に場がどよめいた。

「正気か乙女!」

「帝国の軍門に下ると言うのか!?」

「無論」

席を立ち、私は王達を一人ずつ見る。

「相手が侵略行為を働くというのならば私も剣を取る。圧政に苦しむのは民衆だ。それがわかっていて傘下に加わろうなどと、私とて考えていない。だが…」

思い出す。

私を偽善と罵った、今は亡き獅子王の言葉。

「だが、無辜の民の流す涙が少しでも減らせるのならば、私は敢えて腰抜けの汚名をかぶるつもりだ。誰だって好んで戦をする訳ではない。そうであろう?」

私の言葉に王達は頷く。

できる事ならば、少しでも兵や民衆の傷つく姿を見たくはない。

私が一人後ろ指差されるのならば、それでいい。

東方同盟の一件以来、私はそう考えるようになっていた。