王宮に戻り、一息つく。

「やれやれ…とんだ騒ぎに巻き込まれた」

長い絨毯敷きの廊下を歩く紅の背中に。

「誰のせいだと思っているのだ!!」

私はガァーッとまくし立てる。

「あんなおかしな噂になってしまって!どうするつもりだ!あの噂を消すのにどれだけの労力がかかると思っている!」

全く、紅の言動にはいつも本気で頭にきてばかりだ。

特に。

「ならば噂を真実にしてしまえばよかろう」

こういう事をしれっと言う辺りが。

「え…?」

長い廊下の途中。

私と紅は立ち止まって見つめあう。

「く…紅…?」

胸の高鳴りを抑えきれない私。

その私に。

ピシッと。

紅は人差し指を立てて見せた。

「一つ条件がある。鍛錬場で俺とひと勝負しろ。俺に勝てたら考えてやってもいい」

彼はそう言って、いつもの皮肉混じりの笑みを浮かべた。