ガバッと。

何の前触れもなく、紅は私の肩を抱き寄せた。

「ならん。この女は俺のものだ」

「な…ななななな…」

紅のその発言に動揺したのは、誰あろう私だった。

それだけでも始末におえぬ発言だったというのに。

「おおっ!?」

「紅様が乙女様の肩を抱いておられるぞ!」

ここが城下町の真っ只中だというのが尚始末におえなかった。

歓声、口笛、はやし立てる声。

「それはプロポーズという事ですか、紅様!」

「おお、ついに!」

「女神国に紅国王の誕生か!」

「いやぁ、焦らされましたぞ、紅様!!」

「乙女、どうか末永くお幸せに!」

何やら大変な事態にまで発展している。

いつの間にか婚約の議のパレードの如き様相を呈してきた城下町。

どこかでシャンパンの栓を抜く音までが聞こえてきた。

「どどど、どうするのだ紅!収拾がつかぬぞ!?」

すっかり舞い上がる私に。

「む…」

流石の紅も、失策だったとばかりに眉を潜めた。