「あ、そうだ、くれないおまえ!!」

突然カイトが大きな声を上げる。

「てきにまけて、けがしたんだろー!!かっこわりぃ」

「これ、カイト…」

子供の言う事とはいえ、流石にこれは紅が気を悪くする。

私は背後に隠れるカイトの頭を軽く叩く。

と。

「ああ、負けた。なかなかに手ごわい相手でな」

軽く笑ってカイトの言葉をいなす紅。

流石、彼は大人だ。

「いいわけはみとめないぞ!きしはいいわけなんてしないんだ!」

顔をしかめてカイトが言う。

「ああ、確かにな…いや、まことに耳が痛い」

苦笑いしながら紅が返す。

この二人のやり取りは、何だか見ていて笑いを誘う。

「だめだなぁ、くれないは」

紅が下手に出るのに気をよくしたのか、私の背後に隠れていたカイトが身を乗り出した。

「そんなんじゃあ、おとめはあずけられないな。おれがあずかってやろうか?」

ふふ、こいつめ、生意気に。

微笑ましく聞いていたその時だった。