紅は、私の長い銀髪を愛でるように撫で付ける。

「実に役得だ。この新雪のような美しい銀髪を間近で見られるのは、この地広しと言えども俺しかいるまい」

性格が悪いのかと思えば、彼はこうやって私を褒め称えてくれる事もある。

その誉め言葉が大袈裟すぎて、私は嬉しくもあるが苦手でもある。

「い、いいから…放せ…」

語調が弱くなる。

何故だろう。

鍛錬の時は本気で打ち込む事だってできるのに。

「先程、兵達には宿舎に戻るよう言っておいた。誰も見てはおらぬさ」

「あ…」

月明かりに長く伸びた私と紅の影。

その影が、ゆっくりと重なった…。









私達を照らす満月は、赤く輝いていた…。