結果として東方同盟は成立。

東の地は協力体制の下、帝国に対抗する力を得た。

とはいえ、その兵力総数は百三十万。

対して帝国は二百万の兵力を持つ超大国だ。

兵の練度も士気も高いと聞く。

決して同盟が成ったからと楽観していられる相手ではない。

だから私もいても立ってもいられず、こうして自ら見張り台に立ったりもしているのだ。

「お前が見張りに立ったからと言って国が危機から脱する訳でもなかろう」

また皮肉たっぷりに紅が言う。

元々は自由騎士という流れ者だったこの槍の使い手は、数々の戦で私と私を慕う騎士達の危機を救い、今では女神国になくてはならぬ『加護の風』となった。

『紅の旋風』『魔風』とも称されるその強さは一騎当千であり、戦乙女とも呼ばれる私とも互角に斬り結ぶだけの実力を兼ね備えている。

信頼は置いている。

正直…好意も抱いている。

しかし彼の皮肉は本気で腹に据えかねる事もしばしばだ。

「憎まれ口を叩いていないで放せ!臣下の分際で女王を抱きしめるなどと無礼な!」

とうとう手を振り上げた私を。

「!」

紅はいともたやすく取り押さえた。

「寒いのだろう?体が震えている」

「……」

真っ直ぐな眼差し。

何故だか抵抗できなくなる。