東の騎士達は完全に士気を取り戻していた。

剣を、槍を、弓を手に、我先にと帝国兵に戦いを挑む。

かたや帝国兵もその士気は衰える事はなかった。

「蹴散らせ!貴様らは西の地をその猛威で勝ち取った最強の皇帝の兵ぞ!敵前逃亡は許さぬ!」

苛立ち混じりの皇帝の命令に、鈍色の甲冑の群れが怒声と共に襲い掛かってきた。

最早魔道の兵器はない。

二百万と百三十万。

兵と兵の正面からの激突。

それは巨大なうねりを伴った津波同士の衝突のようでもあった。

刃と刃のぶつかる音。

怒号と怒号のかけ合う様。

悲鳴、鍔迫り合い、甲冑の音、馬のいななき。

ぶつかり合った軍勢同士が混ざり合い、渦を巻いて火花を散らす。

人と人の争いとは、ここまでの強大な力を生み出すものなのか。

ちっぽけな人間でさえ、その意志が集まれば大地を揺るがすほどの脅威となり得る。

本意ではなかったものの、戦は私に人間の『意志の力』を知らしめていた。