左肩から右脇腹へ。

大きく傷が刻まれた。

紅の赤い外套が、更に赤く染まる。

最早立っている事も出来ぬほどの重傷。

ふらつく紅が。

「…!!」

吊り橋から大きくよろめき、深い谷底へと転落するのは当然と言えば当然の結果であった。

「……」

私はその様子を、声も上げずに見ていた。

まるで悪い夢を見ているかのようだった。

戦いに常勝など有り得ない。

そんな事はわかっている。

しかし…紅にそれは当てはまらない。

紅は負けぬ。

紅が死ぬ事など有り得ぬ。

心のどこかで、そんな事を思っていたのだ。

だが…。










紅は血にまみれ、底すら見えぬ深い谷へとその姿を消してしまった…。