初めて目の当たりにする皇帝の剣。

適度に湾曲した片刃の剣で、その刃には波打つような紋様がある。

ドンヨリと曇った空からこぼれる僅かな日の光さえも反射するその鍛え上げられた刃は、殺人の為の凶器でありながら芸術品のようでもあり、その輝きはその場にいた全ての者達を魅了した。

「珍しい品であろう?」

自らの愛剣を見せびらかすようにして皇帝が言う。

「異国の剣でな、『カタナ』というらしい。そのカタナの中でも『オオワザモノ』と呼ばれる最高級品でな…金貨数千万に匹敵する価値のあるものだ」

そのカタナという剣を、皇帝は何と紅の目の前で鞘に納めた。

「何の真似だ?」

槍を構えたままの紅に、皇帝はニヤリと笑いかける。

「遠慮するな。これが俺の流儀だと言った筈だ」

またも腰を低く落とす皇帝。

…あの構えから紅の突きは捌かれた。

ならば。

「これならどうだ!」

一瞬穂先を下段に向ける…と見せかけ、その穂先が突然跳ね上げられる!!

下段からの払い!!

虚の動きを交えた必殺の一撃はしかし。

「!!?」

またも皇帝のカタナによって弾かれた。

しかも、一瞬にして抜き放たれた刃の一撃で。