まず構えたのは紅。

愛用の得物、魔槍を大きく構え、穂先を皇帝に向ける。

「どうした。抜かぬのか?その腰の珍妙な剣は飾りではあるまい」

紅が言うが。

「構わん。これが俺の流儀だ」

皇帝は鞘に納めたままの剣の柄に手をかけ、腰を低く落とした。

見た事もない構えだ。

「遠慮なく突いて来い。旋風とまで呼ばれる貴様の槍捌きは聞き及んでいる」

皇帝はこの戦いを明らかに楽しんでいた。

「貴様の槍捌き、俺に見せてみろ」

「……」

ギン、と。

紅の眼が皇帝を射抜く!

「篤と味わえ!」

その瞬間、魔槍の穂先から閃光が走った!!

そうとしか見えぬほどの神速の突き!!

皇帝から見ればそれは恐らく「点」にしか見えなかったであろう。

離れた場所にいる私達ですら、穂先から「線」が伸びたようにしか見えなかった。

それ程の一撃。

しかし、皇帝はそれを。

「ぬるい」

同じく「閃光」にしか見えぬ一撃で捌いた!

「!!」

跳ね上げられる紅の魔槍。

だがおかしい。

鞘に納められたままだった皇帝の剣は。

「その程度か?」

いつの間にかその姿をあらわにしていた。