人目を避けるように 真っ黒な長い髪で顔を隠し
細い学校へは遠い道を進む
私の半径1mには 男はいれない
なるべく 女もいれない 一人だけの空間がほしい
だから 遠回りでも構わない
ついてしまった学校を 人気(ひとけ)のない裏口から侵入し
震える肩を押さえ男から逃げるように 階段を上がる
やっとの思いで着いた教室に 私が入れば あんなにうるさかったはずなのに 一気に静まり返る
そんないつもと変わらない一日
窓側の一番うしろの日が当たる席に座る
視線が痛くて 体の震えが止まらないのもいつも通り
「ふぁぁあ おはよう 愛衣 眠っ」
私の右隣に 眠そうに机に突っ伏している
片桐雛乃(かたぎりひなの)
幼なじみというか 腐れ縁
「… おはよ」すぐに返事をしないのもいつも通り
いつもと同じはずなのに あいつが今日も 近付いてくる
心拍数が上がり 呼吸が乱れる 身体中から汗が出て 震えるだす体
「愛衣 おはよ 相変わらず 今日も日 当たってんな 」
半径1m その壁を壊しにかかるあいつ
「 彼方 おはよう あっちいって」
「相変わらず今日も雛乃は冷てえな」
雛乃が守る 半径1mの壁
昨日もそうだ 一昨日も その前も
いつもと同じ 私を殺しにかかる
なのに 今日は少し違う気がしてた