あの日から5年が経った。

裕人が死んでしまってから、
どうしても私は恋に怯えてきた。

私は臆病だから、恋をするのが怖かったの。

私は嘘つきだから、本当の気持ちが言えなくて、また人を傷つけてしまうから。

だから、私は恋をしない。

それは、決めたこと。

立ち直っても、やっぱり裕人の存在は大きくて、私は変わることはできなかった。

前に進むなんて、大口叩いといて、笑っちゃうよね。

でも、私にはそれほど裕人の存在が忘れられなかったの。

大好きだった。

愛してた。

だから、私は恋をしない。


君に出会ったのは、裕人を失ってから5年目の春だった。

大学を卒業して、大手会社に就職した私。

それなりに学力はあったし、真面目な方だから、すぐに就職は決まった。

君はそんな緊張した式の中、私の隣でいびきかいて寝てたんだ。

正直呆れた。

なんだこの人って。

けど、興味を惹かれたんだ。

どんな人だろうって。

そして、君の瞳は空いたんだ。

大きくて真っ直ぐな瞳が私を見つめたの。


驚いた私は慌てて顔を背けた。

けど、君はトントンって私の膝を叩くいて、

「ねぇ、名前は?」

って言ったんだ。

「…高崎玲奈。」

「玲奈ね。俺は佐々木大翔。」

驚いた。

裕人と同じ名前だったから。

なんとなく、彼と顔立ちも似ていて、私は彼に君を重ねたんだ。

失礼なことだって分かってても、君があまりにも彼に似ていて、私は惹かれてしまった。


すぐに私たちは仲良くなった。

馬が合って、部署も一緒で、お昼も一緒に食べるようになった。

周りからは付き合ってるの?って聞かれるくらい。

社内恋愛は禁止じゃなかったから、別になんとも言われなかったけど。

なんとなく、嬉しかった。




「玲奈、俺の彼女になって。」




そう言ってくれた時、すごく嬉しかった。

なんともない言葉だったけど、私は君に恋をした。

けど、裕人と重ねてたから、罪悪感があって、返事をためらったんだ。

「…嫌だった?」

不安そうに聞いてくるから、過去を話してしまった。

きっと、ずっと誰かに聞いて欲しかったんだ。

大翔なら、受け止めてくれるんじゃないかって、思っちゃったの。




話し終わった時、君は悲しい顔をしたね。

そりゃそうだよ。

他人と重ねられてたんだから。

好きな人からそんなことされたら、私だって悲しくなる。

「ごめんね。」

私は俯いた。

あぁ、やっぱり話すんじゃなかった。

けど、君は私の頬をそっと撫でて、こう言ったんだ。



「忘れなくていい、けど好きだよ。」


あぁ、この人でよかった。

そう思ったよ。

涙が止まらないくらいだもん。

大好きなんだ。

君が愛しくて仕方ない。


そんなところも、やっぱり裕人と似てる。

私を包み込んでくれる裕人。

大翔も私を包み込んでくれた。

けどね。

彼とは違うんだ。

君は最後にこう言ったよね。

「俺が側にいるから。だから、泣けよ。」

私の心の傷をちゃんと分かってくれて、私の心を癒してくれる。

裕人にはない優しさがあるの。

君は私に多くの言葉をくれたよ。

私の心を浄化する言葉。

ありがとう。

大好きだよ。

愛してるよ。

こんな私だけど、君は好きだと言ってくれた。

私もそれに答えようか。

ねぇ、私と一緒に歩んでくれますか?


END


こんにちは。

実姫伽です。

今回、『君からの手紙』の続編となりました。

中々どうしようか迷ったのですが、やっと書くことができて嬉しく思います。

最初はまだ恋に踏み出せず、そのまま一途に思い続けてる方もいいかと思ったんですが、裕人に似てる子に恋をしてしまうという設定もありかなと思い、このようになりました。

小説の中で生きたこの子達。

幸せになって欲しいです。


さて、これで無事ハッピーエンドなわけですが、番外編も書けたらと思っていますので、そのまま本棚に入れていただいて、待っていただけると嬉しいです。

少し遅くなるかもですが、気長に待っててください笑

それでは、ご愛読ありがとうございました!

実姫伽

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