裄くんに腕を引かれて来た場所は、体育館の裏。

大会関係者の車が2、3台止まってるだけの、静かな場所。

片付けなどあるから、その車の持ち主もしばらく来ない。


「何が、あった?」


相変わらず、優しい口調の裄くんと、泣き続けるあたし。

優しい裄くんに、惚れ直してしまう。


けれど、綾子のことが好きな裄くん。


『優しくしないで』

そう言えたらどんなに楽だろう。

これ以上、裄くんを好きになりたくないから。

でも、そんなこと、言えないよ…

やっぱり裄くんが好きなんだもん。

言えるわけないよ…