先輩たちが何組か分からないから
もっと迷うかと思ったけれど


彼方先輩は、廊下ですごく目立ってた


なんだろう、ハデなわけじゃない
でも、目を引く感じ


1人ぼんやり、廊下の窓から体育館の方を眺めていた


「彼方、先輩…?」


横に立って、顔を覗き込む
すぐ、先輩は気づいてくれた


「あ、えーと…藤咲?だったっけ」


名前、覚えてくれたんだ…
ちょっと嬉しい、かな


「そう、です。こんにちは」
「…何かあった?」
「…え?」


彼方先輩に会う時、いつも心の中を読まれてる気分になる


いつでも先輩は先回り


「いや、髪も切ってるし雰囲気?が違うというか。いいことでもあった?」


先輩は魔法使いですか、と言おうとして
止めた


「あの、そ、空くんとお付き合い、
することになりました」

「…そ。おめでと。」


「それで、彼方先輩に、お礼を言おうと思って。」


お礼、の言葉を聞いて
彼方先輩はあのいつもの困り顔になった


「…なんで?俺、なんかしたっけ?」

すごく、助けてもらいましたよ、先輩


空くんとの文通が途絶えた時


わたしの気持ちがぐちゃぐちゃだった時


「空くんを信じろって、あと、
笑ってろって、言ってくれました。」


「そんだけじゃん」


「でも、…本当にありがとうございました。」


あの時、あの言葉がなかったら
もっとわたしは悩んで、迷ってた


ぺこりと頭を下げたわたしを見て
彼方先輩はさらに困り顔