ギリギリセーフの朝
昇降口についても、ずっと手をつないだままで
「空、くん、あの…」
「え、ごめん、早すぎたかな」
空くんは全く息切れなんてしてなかった
わたしはもう、限界
わたしに合わせなかったら、空くん
もっと早く着いたはずなのに
「大丈夫、だよ、平気。合わせてくれて、ありがとう…
それよりもね、あの、
手、離さないと、靴…」
わたしたちの手は、
ぎゅっと、繋がったまま
「あ!ごめん、靴変えないといけないのに」
空くんは、全く忘れていたようだった
「あ、わたし、離したかったわけじゃない、から…
空くんの手、すごく、安心する…だから」
ずっと、つないでいたかった
離してしまうのが、なんだか寂しくて
「伊織の手、あったかかったからつい。
ごめん。
今日部活もないから、一緒に帰ろう?」
優しく笑いかけてくれる、空くん
そっと、手が離れていく
「うん、一緒がいいな…!
図書室で、まってて、いいかな…?」
「分かった、迎えに行くから待ってろよ」
なんだかんだ靴を履き替えて、
早歩きで廊下を進む
あともう少しで、空くんの教室に着く
一緒のクラスだったらなって、思っちゃう
「伊織、さっき言ってたことだけど」
さっき…?
手が離れて、じわじわ冷やされていく手をぎゅっとにぎる
「俺も、伊織のこと離したくないから。
ずっと、隣で手をつないで笑ってたい」